第152章 不倫の常習犯

「私がどうするかは重要ではありません。大切なのは山本坊ちゃんがどうするかです」彼女は美しい目を細め、「山本坊ちゃんに約束していただきたいのです。もう高木朝子を助けないと」

山本正博は黙って彼女と見つめ合い、深い淵のように澄んだ瞳には、解けがたい思いが映っていた。

彼は高木朝子を助けていないと説明したかったが、最後には全て「わかった」という一言になった。

池村琴子の心はようやく落ち着き、気分は特に晴れやかになった。

彼女は山本正博になぜ承諾したのか尋ねず、ただ笑顔で約束した。「必ず賞を取ります」

彼女は山本正博が今日突然態度を変えたのは、そのデザインコンテストのためか、さもなければ鈴木霍霍の件のためだと思った。

山本正博が人に頼むときもこんなに話が通じやすいとは思わなかった。離婚前の生活を思い出させた。あの時も彼はこうだった。淡々と「わかった」と言い、何も問わなかった。

池村琴子は頭の中の記憶を振り払い、笑顔で別れを告げた。

彼女が去った後、山本正博は長い間その場に立ち尽くしていた。

今回、彼らは心を引き裂くような非難も、鋭い皮肉も交わさなかった。母の言う通り、彼は彼女を信じてみることができるかもしれない。彼女が彼と結婚したことには、そんなに多くの陰謀はなかったと。

池村琴子は道中で花と生活用品を買い、自分の住まいに戻った。

玄関前に一人の人が立っていた。

南條夜は何かを持って、彼女を見つけると戸惑いながら近づいてきた。

「池村さん……」

「南條さん?」

山本正博がこの部屋は南條夜が彼女にプレゼントしたものだと言っていたので、今南條夜を見て、池村琴子の心には違和感が浮かんだ。

彼女は部屋代を返そうと思った。南條夜の部屋は受け取れないから。

「どうしてここに?」彼女の眉間には疲れが見え、声は淡々としていた。

南條夜は優しく言った。「あなたのお兄さんたちが後でここで食事をすると言って、私に先に来て手伝うように言われたんです」

池村琴子はそこで初めて携帯を見て、高橋謙一と高橋忠一からメッセージが来ていたことに気付いた。彼女は花を抱えていたためメッセージを確認する余裕がなかったのだ。

南條夜は小声で言った。「私は料理が得意です。材料も買ってきました。今夜の食事は私に任せてください」