彼は片手をポケットに入れ、彼女に向かってゆっくりと歩いてきた。その姿は少し冷たく、切れ長の眉と輝く瞳、その整った顔立ちは言葉では表せないほど美しかった。
池村琴子は二歩後ずさり、彼との距離を広げた。
彼女の動きを見て、山本正博は冷淡に唇を歪めた。
彼女が山本宝子を迎えに来ることを知って、彼も来ていた。ずっと彼女の後をついて行き、彼女が山本宝子と楽しそうに話している様子を見て、少し驚いていた。
たった一日で彼女が山本宝子の心を掴むとは思わなかった。
「大会の件は既に解決した」彼は一旦言葉を切り、冷淡な口調で続けた。「私の顔に泥を塗るな」
池村琴子は彼がどう解決したのか聞かなかったが、その冷たい口調に血が上った。「それなら山本坊ちゃんは他の方を探されては?」
山本正博は嘲笑した。「何?また棄権するつもり?私たちの賭けを忘れるな。この大会は必ず勝たなければならない」