第181章 間違えた

池村琴子は思いもよらなかった。こんな状態なのに、彼はまだ自分を連れて行こうとしているなんて。

外には大勢の人がいて、このまま裸のまま抱かれて出て行けば、すぐにニュースの見出しを飾ることになるだろう。

もうこうなってしまったのだから、まずはある人の逆毛を撫でておいた方がいい。

彼女は山本正博の腕を支え、小声で言った。「まず私を下ろして。」

彼女の声は穏やかで、心を流れる清らかな水のようだった。山本正博の瞳の色が一層深くなった。

池村琴子は急いでこの機会に振り払って立ち上がった。

彼の深い眼差しに向き合い、池村琴子はお腹に手を当てながら、静かに言った。「確かに子供はあなたの子です。」

「でも私たちは既に離婚しました。子供もあなたとは関係ないです。」

「離婚」という二文字が山本正博の鼓膜を深く刺した。