「今、聞いたんだけど、お義母さんがもうダメみたい……」
その言葉を聞いて、池村琴子の心臓が「ドキッ」と鳴り、深い谷底に沈んでいくような気がした。
覚悟はしていたものの、現実に直面した瞬間、どうすればいいのか分からなくなった。
「今すぐ行きます」
琴子は急いで軽めの黒い服に着替えて外に向かった。
南條夜の母が丁度ドアの外で待っていて、琴子が振り返りもせずに去っていくのを見て眉をひそめ、南條夜に言った。「離婚したのに前の家族のことを気にかけて、お腹の中には他人の子供がいるなんて。この女はあなたのことなんて全然考えていないわ」
「そもそも考えたことなんてありませんから」南條夜は笑みを浮かべ、冷たい目つきで言った。「ずっと私の一方的な想いでした」
その言葉を聞いて、南條夜の母は息を飲み、顔をしかめた。「一方的な想い?あなたがこんな女に一方的な想いを?」