山本正博は淡々と言った。「高橋忠一が君にくれたあのマンションは、南條夜の名義だ」
池村琴子は驚いた。そのマンションが南條夜のものだとは思わなかった。
昨日、彼女はそのマンションを見に行った。
マンションは高級内装で、家具も揃っており、間取りと採光も良く、ソファで少し休んだだけで心地よさを感じ、すぐにそのマンションが気に入った。
ずっと兄からのプレゼントだと思っていたが、まさか所有者が南條夜だとは。
南條夜の申し訳なさそうな表情を思い出し、琴子の心臓が高鳴った。
南條夜は彼女に償いたかったのだろう、兄たちと共謀してこのことを隠していた。
でも山本正博はどうやって知ったのだろう?
「私のことを調べているの?」琴子は眉をひそめて彼を見た。「私も知らないのに、あなたがそんなに詳しく知っているなんて、スパイを配置するのも大変でしょうね」