「高橋進が来るの?」
池村琴子は眉をひそめて黙っていた。
前回高橋進と揉めてから、彼は彼女の生活からほとんど姿を消していた。
「来てほしくないなら断るよ。俺も彼のことは好きじゃないし、私たちの会話の邪魔になるだけだから」高橋謙一は軽い口調で、嫌悪感を隠そうともしなかった。
兄に電話するように言われなければ、高橋進の名前すら口にしたくなかった。
こんな奴が来て何になる?雰囲気を台無しにするだけじゃないか?
「彼だけ?」
「他に誰に来てほしいの?」高橋謙一は高橋進の偏愛を思い出し、声が冷たくなった。「ゆっくり休んで。明日は彼が来ないように止めるから…」
「いいの」池村琴子は目を細め、笑みを含んだ声で言った。「来させて。できれば高橋姉帰も連れてきてほしいわ」
「彼女を呼んで何するの?」高橋謙一は冗談めかして言った。「明日また何か面白いことが起こるの?」