ブラックスワンホテルの入り口で、BMWのX5が駐車場に真っ直ぐ入っていき、その後ろから見知らぬブランドの電気自動車も続いて入っていった。
高橋小雨は車を施錠し、両手で二人を引っ張ってエレベーターホールへ向かった。
「ブラックスワンホテル」の文字を見て、池村琴子は眉を上げて尋ねた。「カラオケじゃなかったの?」
「あるある、全部あるよ!歌って踊れて、お酒も飲めて、イケメンも美女もいっぱい!」高橋小雨はニコニコしながら二人をエレベーターの中に押し込んだ。
鈴木哲寧はエレベーターのドアがゆっくりと閉まるのを見つめ、顔が真っ黒に変わった。
そのとき、携帯の着信音が鳴り、鈴木哲寧は画面を確認すると、すぐにマナーモードにしてポケットに入れた。
高木家の前で山口念と一緒に立っていた鈴木母さんは、怒りで顔を真っ青にしながら、何度も電話をかけ続けた。しかし鈴木哲寧は電源を切ってしまった。
「この馬鹿息子、私の電話を切るなんて!」
鈴木母さんは携帯を投げ出しそうになるほど怒り、振り向くと山口念が気まずそうに立っているのを見て、優しく微笑んだ。「念ちゃん、もう少し待ってね。今日は絶対にあの子を呼び戻して、あなたを送らせるわ。」
パーティーが終わるとすぐに鈴木哲寧は山口念をここに置き去りにし、鈴木母さんは怒りで鼻から煙が出そうだった。
山口念は気にしない様子で手を振った。「いいんです、おばさま。友達の車で行きますから。」
どうせ明日、おばあさまの誕生日が過ぎれば、彼女と鈴木哲寧の婚約も有名無実になるのだから。
鈴木母さんは山口念が去っていくのを見て、怒っているのだと思い込み、急いで自分のアシスタントに電話をかけた。「鈴木哲寧の居場所を調べなさい。今日こそ、あの子の皮を剥いでやる!」
ブラックスワンホテルの高級スイートルームで、高橋小雨の悲鳴が天を突いた。
「うわぁ、超イケメン!」
三十人の異なるタイプと容姿の男性たちが一列に並び、高橋小雨は端から端まで歩きながら、一人一人をじっくりと品定めした。
すごい、みんな芸能人顔負けだ。
池村琴子と安藤静はソファに座り、この一列の男性たちを見て、顔を見合わせ、足の指が床を掻きむしるほど気まずくなった。