ブラックスワンホテルの入り口で、BMWのX5が駐車場に真っ直ぐ入っていき、その後ろから見知らぬブランドの電気自動車も続いて入っていった。
高橋小雨は車を施錠し、両手で二人を引っ張ってエレベーターホールへ向かった。
「ブラックスワンホテル」の文字を見て、池村琴子は眉を上げて尋ねた。「カラオケじゃなかったの?」
「あるある、全部あるよ!歌って踊れて、お酒も飲めて、イケメンも美女もいっぱい!」高橋小雨はニコニコしながら二人をエレベーターの中に押し込んだ。
鈴木哲寧はエレベーターのドアがゆっくりと閉まるのを見つめ、顔が真っ黒に変わった。
そのとき、携帯の着信音が鳴り、鈴木哲寧は画面を確認すると、すぐにマナーモードにしてポケットに入れた。
高木家の前で山口念と一緒に立っていた鈴木母さんは、怒りで顔を真っ青にしながら、何度も電話をかけ続けた。しかし鈴木哲寧は電源を切ってしまった。