「全部ですか?」鶴田愛子は驚いて聞き返した。高橋小雨は5人だけ欲しがっていたのに、もう一人が全部欲しいと言うなんて。
以前なら喜んで飛び上がるところだったが、今は不安でいっぱいだった。
全部取られたら、鈴木哲寧にどう説明すればいいのだろう?
鶴田愛子は苦々しく言った。「お嬢さん、さっきも言ったように鈴木坊ちゃんも全部欲しいと言っているんです。わざと私を困らせているんですか。」
「物事には順序があるでしょう。その鈴木哲寧って人は、どんな変な習慣があるの?他人のテーブルから料理を奪うなんて!」安藤静は唇を歪めて笑ったが、その笑みは目には届いていなかった。
鶴田愛子は言葉に詰まった。彼女は気づいた。この女性は自分に対抗しているのではなく、鈴木哲寧に対抗しているのだと。
高橋小雨は安藤静が意地になっているのを見て、小声で注意した。「静姉、本当に鈴木哲寧と男を奪い合うつもり?かっこいい!」
彼女は親指を立てた。
池村琴子は横に座って、黙って茶を飲んでいた。
彼女には分かっていた。安藤静はまんじゅうを争うのではなく、意地を張っているのだと。
「お嬢さん、私は本当に鈴木哲寧には逆らえないんです。どうか助けてください。」安藤静が譲る気配がないのを見て、鶴田愛子は泣きそうになった。
彼女のその様子を見て、安藤静は目が赤くなり、深く息を吸って言った。「分かりました。全部持って行ってください。」
「彼は男が好きなんでしょう?全部あげます。」
安藤静は唇を歪めて笑い、目には冷たい光が宿っていた。
これが鈴木哲寧が意図的に自分に逆らっているのだと分かっていないはずがない。そうであるなら、彼の望み通りにしてやろう。
この言葉を聞いて、鶴田愛子は土下座して感謝したいくらいだった。
鈴木哲寧の小切手が手に入ることを考えると、鶴田愛子は笑みが止まらなくなり、一列に並んだ男たちに向かって言った。「さあ、隣の部屋に来てください。」
男たちはこの言葉を聞いて、妙な表情を浮かべた。
彼らはさっきはっきりと聞いていた。隣は鈴木哲寧だと。鈴木哲寧って誰?鈴木家の長男で、男なんだぞ!
男性に奉仕しろというのか?
数人がその場で拒否しようとしたが、鶴田愛子は急いで目配せをした。「我慢してください。」
どうしようもない。彼らはただの商品に過ぎず、客を選ぶ資格はないのだ。