第176章 気にしない

車の中で、横山紫は窓の外を見ながら、心配そうに尋ねました。「山本社長、もし池村さんが後悔して試合に出たいと言ったら、私は辞退してもいいです。あなたたちの関係を壊したくありません」

「私と彼女には何の関係もない」山本正博は冷たく言い放ちました。「彼女が自分で辞退したんだ。それを尊重しよう。運転を始めてくれ」

車内の雰囲気は少し気まずくなり、アシスタントはアクセルを踏み、車はゆっくりと動き出しました。

山本正博は唇を固く結び、何を考えているのか分かりませんでした。

車内は薄暗く、横山紫は窓の外を横目で見ながら、口角がわずかに上がりました。

……

光町市、桜団地にて。

池村琴子がエレベーターを出ると、玄関前にしゃがみ込んでいる人が目に入りました。

池村琴子を見た南條夜は急いで顔を上げ、喜色満面で立ち上がりました。「来てくれたんだ、待っていたところで……」