第213章 価値がない

「私です」

池村琴子は素直に認めた。

高橋謙一は少し驚き、疑わしげに尋ねた。「どうして"W"組織の人を知っているんだ?」

「高橋姉帰さんにその組織の友人がいるなら、私にだっていてもおかしくないでしょう?」池村琴子は眉を上げ、意味深な笑みを浮かべた。

その言葉を聞いて、高橋謙一は大笑いした。「じゃあ今夜は面白いものが見られそうだな。さあ行こう、一緒に彼女のお祝いに行こう!もし高橋姉帰の嘘がその場でばれたら、笑い転げちゃうぞ!」

……

光町市の中心部にあるマンション。

山本正博は鈴木哲寧と部屋で話をしていた。横山紫がお茶を持って入り口まで来ると、中の声がはっきりと聞こえてきた。

「高木朝子はこの数年ずっと山本正広と連絡を取り続けていたんだ。だから山本宝子を密かに産むことができたわけだ」

「調査結果によると、山本正広は彼が言うほど高潔な人間じゃない。あなたが『死んで』いなければ、彼も時間を見つけて『復活』していたはずだ。今回は彼にとってチャンスだった。池村琴子がいなければ、本当にその隙を突かれていたかもしれない」

鈴木哲寧は明るく笑った。

池村琴子と山本正広が同時に現れた時、会社の古い役員たちは確実に山本正広を選んでいただろう。

しかし池村琴子は山本正博の子供を妊娠していて立場が違った上、あの素晴らしいスピーチで評価を上げ、山本正広の企みを阻止できたのだ。

山本正博はその日の池村琴子を思い出し、瞳の色が深くなった。

そのとき、鈴木哲寧の携帯が鳴った。電話に出ると、母親の興奮した声が聞こえてきた。「早く帰ってきなさい。いい知らせがあるの。安藤静のことよ!」

「何の話?今話してくれてもいいじゃない?」

「だめよ、早く帰ってきなさい。今回は家族会議なの!」

鈴木哲寧は仕方なく電話を切り、山本正博は淡々と言った。「先に帰るといい」

彼は安藤静が鈴木哲寧にとってどれほど重要な存在か知っていた。

鈴木哲寧は申し訳なさそうに携帯をポケットに入れ、後頭部を掻きながら言った。「じゃあ先に失礼します!」

そう言うと即座に向きを変え、足早に立ち去った。

ドアが開くと、横山紫がちょうどお茶を持って向かってきた。鈴木哲寧が去った後、横山紫はお茶をテーブルに置き、山本正博を見つめながら、何か言いたげな様子だった。