「私です」
池村琴子は素直に認めた。
高橋謙一は少し驚き、疑わしげに尋ねた。「どうして"W"組織の人を知っているんだ?」
「高橋姉帰さんにその組織の友人がいるなら、私にだっていてもおかしくないでしょう?」池村琴子は眉を上げ、意味深な笑みを浮かべた。
その言葉を聞いて、高橋謙一は大笑いした。「じゃあ今夜は面白いものが見られそうだな。さあ行こう、一緒に彼女のお祝いに行こう!もし高橋姉帰の嘘がその場でばれたら、笑い転げちゃうぞ!」
……
光町市の中心部にあるマンション。
山本正博は鈴木哲寧と部屋で話をしていた。横山紫がお茶を持って入り口まで来ると、中の声がはっきりと聞こえてきた。
「高木朝子はこの数年ずっと山本正広と連絡を取り続けていたんだ。だから山本宝子を密かに産むことができたわけだ」
「調査結果によると、山本正広は彼が言うほど高潔な人間じゃない。あなたが『死んで』いなければ、彼も時間を見つけて『復活』していたはずだ。今回は彼にとってチャンスだった。池村琴子がいなければ、本当にその隙を突かれていたかもしれない」
鈴木哲寧は明るく笑った。
池村琴子と山本正広が同時に現れた時、会社の古い役員たちは確実に山本正広を選んでいただろう。
しかし池村琴子は山本正博の子供を妊娠していて立場が違った上、あの素晴らしいスピーチで評価を上げ、山本正広の企みを阻止できたのだ。
山本正博はその日の池村琴子を思い出し、瞳の色が深くなった。
そのとき、鈴木哲寧の携帯が鳴った。電話に出ると、母親の興奮した声が聞こえてきた。「早く帰ってきなさい。いい知らせがあるの。安藤静のことよ!」
「何の話?今話してくれてもいいじゃない?」
「だめよ、早く帰ってきなさい。今回は家族会議なの!」
鈴木哲寧は仕方なく電話を切り、山本正博は淡々と言った。「先に帰るといい」
彼は安藤静が鈴木哲寧にとってどれほど重要な存在か知っていた。
鈴木哲寧は申し訳なさそうに携帯をポケットに入れ、後頭部を掻きながら言った。「じゃあ先に失礼します!」
そう言うと即座に向きを変え、足早に立ち去った。
ドアが開くと、横山紫がちょうどお茶を持って向かってきた。鈴木哲寧が去った後、横山紫はお茶をテーブルに置き、山本正博を見つめながら、何か言いたげな様子だった。