池村琴子は冷たい表情を浮かべ、目の前の人が頑固なことに驚いた。
サービスマネージャーは高橋姉帰を一瞥し、目を細めた。
この人のことは知っていた。高橋姉帰という名前で、高橋進の娘だ。今日、支配人から貴賓が来るという連絡を受けていたが、その貴賓というのは、おそらくこの個室にいる人のことだろう。
即断即決で、彼女は警備員に目配せをした。「この人を警察に連れて行きなさい」
誰を怒らせても高橋家の人は怒らせてはいけない。
警備員は意を察し、池村琴子の腕をがっしりと掴んだ。
池村琴子は目を伏せ、手を出すべきか迷っているところで、低い声が響いた。「彼女を放しなさい」
全員が声のする方を見た。サービスマネージャーが最初に気付き、どもりながら言った。「支配人、いらっしゃいましたか?」