「どこへ行くの?ご飯まだ終わってないよ!」と高橋謙一が尋ねた。
鈴木羽の綺麗な顔に驚きの色が浮かんだ。「夜の飛行機だから……」
「ちょっと出てくる、すぐ戻るから」大勢に説明する暇もなく、池村琴子は椅子を引いて、飛ぶように部屋を出た。
蒼レストランに向かいながら、南條夜に電話をかけた。
このレストランはプライバシーが厳重で、個室に入ったら、スタッフ以外は入れない。
中に入るには、別の方法を考えなければならない。
「蒼レストランはあなたの会社の系列店でしょう?」
「ああ、どうしたの?」南條夜の声には明らかに喜びが混じっていた。
「お願いがあるんだけど……」
……
蒼レストランで、高橋進と竹内雅子はしばらく話をして、料理がほぼ揃った頃、高橋姉帰がようやく姿を見せた。
「お父さん、雅子姉……」高橋姉帰は親しげに座った。実は彼女は早くに到着していたが、わざと高橋進と竹内雅子に二人きりの時間を与えていたのだ。