「あなたの子供?」上田局長は高木朝子の興奮した顔を見ながら、外の人に向かって言った。「中に入れなさい」
山本宝子が事務所に入ると、全員が彼を見つめていた。
「宝子!」高木朝子は興奮して屈み込み、彼を抱きしめた。「ママはあなたに会いたかった。この数日間どこにいたの?どこを探しても見つからなくて、ママはとても心配したのよ」
吉田蘭が亡くなり、山本正博も事故に遭い、彼女も山本宝子を探しに行ったが、宝子はまるで消えてしまったかのように、葬式の日に姿を見せた以外は誰も彼を見かけていなかった。
高木朝子は彼が無事だと知っていた。きっとどこかに隠れているのだと。今、彼が無事な姿を見て、安堵のため息をついた。
「宝子、ママに会いに来てくれたの?」
この冷たい警察署で、彼女には誰一人身寄りがなく、警察官さえも彼女を同情していた。彼女はこの感覚に耐えられなかった。山本宝子の出現は一筋の光のように、彼女の心の底にある全ての希望を灯した。