彼は木村勝一、木村家の私生児としてしか行けなかった。
彼女と南條夜が一緒にいるところを見なければならないと思うと、彼の心臓は鉄の帯で締め付けられるように痛んだ。
後悔していた。
この私生児という身分を、受け入れるべきではなかった。
彼の表情が良くないのを見て、木村爺さんは咳払いをして煽るのを止め、手を後ろに組んで黙って外へ向かった。
数分後、口では否定しながらも心では認めているこの孫が、正装して出てきた。
黒のカジュアルウェアを身につけ、シンプルで気取りのない姿。亜麻色の前髪の下には、夜空のように漆黒の瞳。カジュアルで気取りのない服装を意識的に選んでいても、彼の周りに漂う強大なオーラと冷厳な雰囲気は隠しきれなかった。
木村爺さんはそんな木村勝一を見て、微かに笑みを浮かべた。
この孫は自分の息子の私生児だが、常に期待を寄せていた。この数年間、この孫は山本家に留まり、戻ってこようとしなかった。それは山本家に対する負い目があったからだ。先日、この孫が突然戻ってくることを承諾した時は、喜びに胸が躍った。
山本正広が生還したという報道が出るまで、この孫がようやく山本家の重荷を下ろしたことを知った。
山本正博が「死んで」こそ、山本正広は「復活」できたのだ。
「行こうか」
彼は杖をつきながら車に乗り込み、窓越しに最も愛する孫がゆっくりとマスクを付けるのを見た。
…
鈴木邸の大広間は明るく照らされ、天井の豪華なシャンデリアは特に眩しく輝いていた。広間の中央には小さなステージがあり、周りは花で美しく飾られていた。女性たちは華やかに着飾り、三々五々と集まって談笑し、男性たちはグラスを手に杯を交わし、とても調和の取れた雰囲気だった。
パーティーの片隅で、南條夜は鈴木家の一行と談笑し、池村琴子は傍らで鈴木羽と内緒話をしていた。
そのとき、鈴木家の執事が近づいてきて、鈴木羽に告げた。「お嬢様、高橋姉帰様が外にいらっしゃいます」
高橋姉帰の名前を聞いて、鈴木羽の表情が一瞬こわばった。南條家の人々の前で怒りを露わにするわけにはいかず、池村琴子に向かって尋ねた。「どう思う?」
高橋姉帰を入れたくなかった。このような品性の下がった人間を入れれば、面倒なことになるだけだ。