第238章 全ての男に機会がある

南條夜は来客を見た。スーツを着た男で、亜麻色の少し長めの髪をしており、マスクをつけていたものの、その雰囲気は目立っていた。

「木村勝一?」

最近東京で最も話題を集めているのは、この亜麻色の髪の男だった。木村家によって驚くべき地位まで引き上げられたという。

「仙は私の婚約者だ。木村さん、彼女とダンスをしたいなら、私たちのダンスが終わるまで待ってはどうだろう?」南條夜は笑みを浮かべながら、極めて低い声で、しかし警告めいた口調で言った。ダンスをするなら、まず自分からだと。

木村勝一は彼を見向きもせず、赤みを帯びた唇を少し上げ、意味深な様子で言った。「彼女があなたの婚約者だとしても、結婚後は毎日でもダンスができる。今この時に急ぐ必要はない。それに、まだ正式な婚約もしていないのだから、どの男性にもチャンスはあるはずだ。」