鈴木家族と南條家の人々が一緒に座って談笑していた。池村琴子は鈴木羽の隣に座り、時折うなずいて微笑んでいた。
鈴木羽は彼女が上の空なのを見て、脇に引き寄せて小声で尋ねた。「何か心配事?」
池村琴子は少し驚いた。
「嘘をつく必要はないわ。私はあなたの母親よ。この程度の息の合わせはできるわ」鈴木羽はため息をつき、「南條夜との結婚を望んでいないの?」
「あなたのお父さんが浮気する前は、私はあなたと南條夜を引き合わせようと思っていたの。自分の愛する人を見つけるより、自分を愛してくれる人を見つける方がいいと思っていたわ。でも今は分かったわ。私自身の結婚生活も不幸なのに、あなたにそんなことを求めるべきじゃないわ……」
「お母さん……」池村琴子は眉をひそめた。「そんな風に自分を責めないで。南條夜のことは、もう決めたわ」
そう言って、一旦言葉を切った。「ご心配なく。後悔するようなことはしません」
少なくともこの数年間、彼女のしてきたことに後悔はなかった。
「本当に後悔しない?」鈴木羽は彼女の手を軽く叩いた。「あなたは明らかに南條夜のことが好きじゃないわ。彼と結婚しても、幸せになるのは彼だけよ、あなたじゃない」
池村琴子は頭を下げ、この件をどう説明すればいいのか分からなかった。
山本正博が亡くなったばかりで、確かに新しい恋愛関係に入るのは早すぎた。
「もし彼のことが好きじゃないなら、今なら後悔しても間に合うわ」
鈴木羽の言葉は警鐘のように、彼女の心に響いた。
時折こちらを見る南條夜を見て、池村琴子の心は急に締め付けられた。
少し考えてから、突然立ち上がった。
南條夜は鈴木正男と笑顔で話しながら、目の端で誰かを見ていた。
「南條さん」
突然、メイドらしき人が彼の側に来て、「青木さんと名乗る方が、お酒を一緒に飲みたいとおっしゃっています」
青木さん?
「蒼レストランのサービス総括だと言っています」
蒼レストラン……
南條夜は少し考え込んだ後、視線を向けると、遠くで手を振っている女性が見えた。緊急の報告事項があるかのような緊張した様子だった。
彼はすぐに池村琴子が話していた、木村勝一がレストランで彼女を助けたことを思い出した。あの時レストランで何が起きたのか、支配人からは報告を受けていなかった。
「鈴木伯父、少し失礼します」