第245章
池村琴子と鈴木愛がショッピングモールを出ると、鈴木愛はまだぶつぶつと文句を言っていた。「おじさんは頭がおかしくなったの?こんな手口も見抜けないなんて?」
池村琴子は微笑んで、山本正博と高木朝子が絡み合っていた時のことを思い出した。彼女も山本正博が頭がおかしくなったのではないかと思っていた。高木朝子のような明らかな偽善者さえも見抜けないなんて。今考えると、男は見抜けないわけではなく、ただ甘い蜜に浸りきっているだけだったのだ。
鈴木愛は話しながら、大小の買い物袋を持って車に乗り込んだ。池村琴子は妊娠しているから重いものは持てないと言って、ほとんどの荷物は鈴木愛が持っていた。
「どこに行く?」シートベルトを締めた鈴木愛が眉を上げて尋ねた。
池村琴子が考えていると、横をオープンカーが疾走し、車内の人が目に入った。
竹内雅子と高橋進だった。
「尾行できる?」池村琴子は唇を曲げて言った。「あの車を追って。」
以前組織にいた時、様々な任務をこなしていたが、その中には愛人を懲らしめるというものもあった。
鈴木羽が愛人を懲らしめたくないなら、自分がやればいい。
鈴木愛は意図を理解し、アクセルを踏んで素早く追いかけた。
鈴木邸のある部屋で、分厚い金と赤の花柄カーペットは埃一つなく、壁には美しい彫刻が施された壁紙が飾られ、豪華なクリスタルシャンデリアが眩しく輝いていた。
隅のソファには、老婦人と着飾った鈴木羽が座っていた。
「進のことだけど、もう一度考え直してみない?」鈴木祖母さんは愛する末娘を見つめ、心配そうに言った。
昨日、家族があれだけの人前で高橋進の面子を潰してしまったことが、まだ気がかりだった。
「お母さんまで説得するの?」鈴木羽は苦笑いを浮かべた。この年で離婚するなんて笑い者になってしまう。
「説得じゃないの。ただ、よく考えてほしいだけよ。これまでの長年の思い出を考えて、衝動的な決定をしないでほしいの。」鈴木祖母さんはため息をつき、「私はもう年だし、半分は土の中よ。あなたの幸せだけを願っているの。どんな決定をしても、私たちは支持するわ。帰りたくなったら、この家はいつでもあなたの居場所よ。」