「南條さん、正直に申し上げますと、山本正博の件については多少の手掛かりはありますが、木村勝一については全く情報が掴めません」探偵は苦々しい表情を浮かべた。この男は行方不明で、どこへ行くにもマスクとサングラスを着用し、神出鬼没。彼らどころか、警察でさえ何も掴めないだろう。
南條夜は端正な眉を軽く上げ、豊かな唇を軽く噛み、深遠な表情を浮かべた。
手掛かりが掴めないことこそが最大の問題だった。
「坊ちゃま」執事が入ってきて、南條夜に告げた。「山本正広がお見えです」
山本正広?
南條夜は口元を歪め、ちょうどいいタイミングだと思った。
「通してください。お茶と軽食も用意して」
「かしこまりました」
……
池村琴子は高橋進と共に高橋家に戻ったが、そこで泣きじゃくる鈴木羽の姿を目にした。
「お母さん……」琴子は胸が締め付けられる思いで、鈴木羽の前まで駆け寄った。
鈴木羽は涙を拭いながら、彼女に向かって無理に微笑んだ。「高橋姉帰の義足が壊れたそうよ。私たちの仕業だと言われているの」
「高橋姉帰の足はどうして切断されたの?」琴子は眉をひそめた。南條夜のプライバシーに関わることだったため、昨日は高橋姉帰が南條夜に何をしたのか詳しく調べなかった。
「鈴木家の門にも入れなかったのに、彼女の足がどうして切断されたのかなんて知るはずがないわ」鈴木羽は落ち着いた口調で話したが、その言葉の底には怒りが潜んでいた。
高橋進が高橋姉帰をそれほど大切にしているとは思えない。高橋姉帰があれだけのことをしでかしたのだから、高橋進が気にしていないはずがない。
高橋進が訪ねてきたのは、おそらく昨日殴られた鬱憤を晴らすための口実だろう。
「あなたが高橋姉帰と両親の連絡を突き止めてくれて良かったわ。お父さんもそれを知って、やっと家での騒ぎを収めてくれたの」
もし高橋進が騒ぎ続けて他人に見られでもしたら、この家に住み続ける面目もない。
鈴木羽の言葉を聞いて、琴子は高橋進が何をしたのかおおよそ察することができた。
あれほど懇々と諭したのに、高橋進は結局何も聞き入れなかったのだ。
「午後に約束があるんでしょう?先に行ってきなさい。私は大丈夫だから心配しないで。東京では、誰も私をいじめることはできないわ」彼女の心配そうな様子を見て、鈴木羽は明るい口調で言った。