第247章 死人に口なし

もし山本正博がそんな人間だったら、山本正広は吉田蘭に助けを求めることができたはずで、何年も逃げ回る必要はなかったはずだ。

当時何が起きたのかは分からないが、もし山本正博がそんな人間だったら、山本家の全てをこんなに早く手放すはずがない。

彼女のツイートに対して、信じる声ではなく、果てしない罵倒が返ってきた。

その悪意に満ちた言葉の数々を見て、池村琴子の鼻が痛くなった。

山本正博は死に、親族も彼から離れ、自分以外に彼の味方をする人は誰もいない。

彼の死とともに、真実も埋もれてしまった。

山本正広のことで胸が高鳴り続け、バス停に着いても気付かないほどだった。

突然、誰かが声を上げた:

「あなたは池村琴子でしょう!」

その一言で波紋が広がり、その場にいた全員が彼女を見つめた。

池村琴子、山本正博というあの殺人者の元妻?

今や誰もがスマートフォンを持ち、山本正広もライブ配信中で、東京はネットでの情報伝播が早い都市だったため、池村琴子の出現はすぐに現場の若者たちの怒りに火をつけた。

「あなたの元夫があんな人間なのに、まだ彼の味方をするの?人の不幸で飯を食うのがそんなに美味しいの?」

「そんなに彼の味方をするってことは、山本正博からかなりの遺産をもらったんでしょう?」

「当事者が暴露してるのに、まだ嘘をつき通すなんて、良心の欠片もないわね!」

……

人々が徐々に近づいてきて、池村琴子は歯を食いしばりながら、ゆっくりと後退した。

群衆はますます興奮し、誰が始めたのか分からないが、ペットボトルが投げられると、無数のゴミも彼女に向かって投げられた。

千钧一发の時、誰かが彼女の手首を掴み、ペットボトルを避けるのを手伝った。

「車に乗れ」

男性の低い声は怒りを抑えていた。

池村琴子は頭が真っ白になり、男性を一目見て、歯を食いしばって、彼と一緒に隣のロールスロイスに乗り込んだ。

運転席では、木村勝一がサングラスとマスクをつけ、身体から冷気が漂っているようだった。

池村琴子は深く数回呼吸し、落ち着いてから、小さな声でお礼を言った。

木村勝一は黒い手袋をはめ、無造作にハンドルに手を置き、少し首を傾げて:「高橋さんはどちらまでですか?」

彼の声は淡々として低く、鼻にかかった声で、どこか怠惰な印象を与えた。