既視感のある光景。
悲しみのあまり、池村琴子は気を失ってしまい、彼女の脆弱な体を心配した南條夜は、何も言わずに彼女を抱き上げた。
南條夜は突然、冷たい視線を感じた。
眉をひそめながら視線の方向を見ると、心の準備をしていたにもかかわらず、瞳孔が僅かに縮んだ。
木陰に立つ背の高い男性の姿は、まるで傘のように優雅で、その凛とした雰囲気は隠しようがなかった。
同じ男として、山本正博の美しさに時として引け目を感じざるを得なかった。
山本正博の冷たい瞳と目が合うと、南條夜の唇が不思議な笑みを浮かべた。
柔らかな唇が動き、淡々と数言を吐き出した。
少し離れた場所で、山本正博の瞳は恐ろしいほど深かった。
南條夜が言ったのは、「遅すぎた」だった。
彼は心の中の殺意を抑えながら、足が地面に釘付けになったかのように、南條夜が去っていくのを見つめるしかなかった。