第272章 迷いの中で

彼女が南條夜のことを好きなら、南條夜と表面的な付き合いなどしないはずだ。

彼女がこれほど手間をかけて自分を引き出そうとしていたことを考えると、山本正博の唇が少し上がった。

彼女と南條夜が表面的な付き合いだけだと分かっていれば、自分がまだ生きていることを直接伝えていたのに。罪悪感を抱えて、こんなに長く彼女から逃げ回る必要もなかった。

「もういいよ、このバカと話してても仕方ない。早く病院に行って全身検査を受けなさい。若くして死なれたら困るから」鈴木哲寧は先に病院に入り、数歩進んでから後ろの人に言った。「そうそう、その車は売った方がいいよ。事故った車は早く手放した方が、厄落としになるから」

病院に入ると、医師は鈴木哲寧に簡単な検査をして、特に問題はないと言ったが、山本正博は入院が必要だと言われた。