池村琴子の心臓もドキドキと激しく鼓動し、眉間にしわを寄せていた。
高橋進の性格からすれば、彼女が言った電話で自殺を考えるはずがない。高橋進は本質的に利己的な人間で、そういう人間ほど命を惜しむものだ。
「お母さん、落ち着いて。もう見張りを付けてあるから、情報を待ちましょう」
彼女は携帯を見ると、案の定、近籐正明からすぐに連絡が入っていた。
近籐正明:高橋進は現在東京第一病院で救命処置中です。まだ生命の危機は脱していません。こちらで原因を調査中ですが、心配しないでください。ここは私たちの縄張りですから、問題ありません。
近籐正明がそう言っても、池村琴子の心は宙吊りのままだった。
前回、近籐正明が山本正広たちを尾行した時も失敗していた。後で木村勝一が関与していたことが判明したとはいえ、やはり不安だった。