第304章 あなたたちは友達?

「そのときは『嘉達』と契約を結んで、全面的なプロデュースをしてあげるわ」

「嘉達」という名前を聞いて、山口念は目を上げ、驚きの表情を浮かべた。

この芸能プロダクションは今や業界トップで、タレントの育成が得意だ。現在のトップスターのほとんどがこの会社の出身で、特に男性タレントは近籐正明を筆頭に業界で非常に有名だ。

「近籐正明が契約解除した後、ポジションが空いているから、そのリソースを全部あなたに回せるわ」松田柔子は自信に満ちた笑みを浮かべた。このような条件なら、山口念が心を動かされないはずがないと確信していた。

山口念は眉を上げた。松田柔子が嘉達を持ち出した意図は分かっていた。承諾すれば、すぐにトップスターになれる。拒否すれば、松田柔子だけでなく嘉達とも敵対することになり、今後干される可能性もある。

今の彼女には拒否する選択肢はなかった。

……

池村琴子は、誰かが自分を陥れようとしていることを知らなかった。

何気なく携帯を見ると、高木阿波子からメッセージが届いていた:仙姉さん、木村家にいますよね?私も今着いたところです。どこにいますか?会いに行きたいのですが。

高木阿波子のメッセージを見て、池村琴子は少し驚いた。

彼女は高木阿波子の印象が良かった。価値観がしっかりしていて、流されない性格。おそらく母親似なのだろうと推測した。

池村琴子は周りを見回し、位置情報を送信した。

高木阿波子は受信したメッセージに驚いて、携帯を落としそうになった。

何を見たのだろう、仙姉さんが本当に返信をくれて、しかも位置情報まで送ってくれた!

仙姉さんは確かに自分のことを気にかけてくれているんだ。

高木阿波子は喜びを抑えきれず、携帯の位置情報を頼りに移動しようとしたところ、高木財源に止められた。

「どこへ行くんだ?」高木財源は落ち着かない様子で彼女の携帯をちらりと見た。

高木阿波子は急いで携帯を後ろに隠した:「友達に会いに行くの」

「友達?」高木財源は目を細め、彼女が喜びを抑えきれない様子を見て、意味深な笑みを浮かべた。「高橋仙に会いに行くのか?」

高木阿波子は答えず、疑わしげな表情で彼を見つめた。また何か無理な要求をされるのではないかと心配だった。