南條夜のほうが、あの人よりずっと良かった。彼女にも、彼女の家族にも優しく、特に叔父を命がけで助けてくれたことを知ってからは、申し訳なさと感動で胸がいっぱいになった。
彼が叔父を助けてくれたのは、自分が悲しむのを恐れてのことだと分かっていた。
「お姉さん、今は頭の中がちょっと混乱していて」池村琴子は目を伏せ、まつ毛が蝶の羽のように震えた。
鈴木愛が自分のことを思って言ってくれているのは分かっていた。でも、もし山本正博がまだ生きていることを知ったら、彼女はまだ自分と南條夜を一緒にさせようとするだろうか?
彼女は目を細め、心の中に迷いが生じた。
「お姉さん、実は今まで言えなかったことがあるの」考えた末、池村琴子は話すことを決意した。「山本正博は、実はまだ生きているの」