第282章 恩人

池村琴子は、鈴木正男がこの車を食い入るように見つめているのを見て、叔父もこの車に目をつけたのかと思った。

「叔父さん、これは南條夜の車で、さっき私に売ってもらったんです」

「お前の車?」鈴木正男は興奮して前に出て、南條夜の手を取った。「お前だったのか、本当にお前だったのか!」

そのとき、家の中から他の人々も出てきた。特に鈴木愛は、この車を見たとき、驚きの表情を浮かべた。

「南條さん、この車があなたのものだったなんて!私たちはずっと持ち主を探していたのに、まさか目の前にいたとは」

鈴木愛は笑顔を見せ、安堵の表情を浮かべた。これで父は眠れない夜を過ごすことはなくなるだろう。

南條夜は鈴木正男に追い出されると思っていたが、まさか会った途端にこれほど熱烈な歓迎を受けるとは思わなかった。