南條家で、南條商はベランダに立ち、電話で小林警部の説明を聞いていた:
「南條兄、この件は多くの人が見ていて、私は臨時職員なので、できることは限られています。それに、高橋進の娘が提出した証拠で自殺の疑いは晴れています。もし私が高橋進は自殺だと言い続けたら、この件が大きくなって私は責任を逃れられません……」
小林警部の言葉には苦々しさが満ちていた。
南條商の要求がなければ、彼も高橋進が自殺したなどと嘘をつく勇気はなかっただろう。
以前は証拠不足を言い訳にできたが、今は高橋進の娘が証拠を見つけた以上、そんなことを言えば、すぐにばれてしまう。その時は非難されるだけでなく、仕事も失うかもしれない。
「心配するな。本当に仕事を失っても、私が一生面倒を見る」南條商は目を細め、その瞳には鋭い光が宿っていた。「真相はどうでもいい。鈴木家には手が出せないが、高橋家の名声は潰さなければならない」