第325章 高橋進の狂乱

鈴木羽のこの態度は誰も予想していなかったが、池村琴子は笑顔を浮かべ、心配を払拭した。

竹内雅子という人は、他人の心理を弄ぶのが大好きだ。鈴木羽の心が崩れなければ、心配することはないと思った。

しかし、最初に崩れたのは高橋進だった。

高橋進はホテルに滞在していたが、すぐにこの写真を受け取った。それも竹内雅子から直接送られてきたものだった。

「高橋社長、私が食事に出かけた時に、奥様がこの男性とデートしているのを見かけました。誤解かもしれないと思い、まずはお見せしたかったのですが」

竹内雅子からこのメッセージが来た時、高橋進は彼女が意図的に離間を図っているのだと思った。結局のところ、竹内雅子を解雇したばかりだったのだから。

しかし、山田義隆と鈴木羽がコーヒーを飲んでいる写真を見た時、高橋進は怒りで顔が歪み、すぐに鈴木羽に問い詰めようと思った。

この写真では、山田義隆と鈴木羽は向かい合って座っているが、山田義隆が鈴木羽を見る目つきには、何か意味深なものがあった。

若い頃の山田義隆と鈴木羽の関係を思い出し、高橋進の顔は青ざめたり赤くなったりした。

よし、いいだろう。これは彼の病気に付け込んで、とどめを刺そうというわけか?

高橋進はドアの方へ歩きかけたが、突然自分が今「アルツハイマー病」の状態であることを思い出した。

もし直接問い詰めに行ったら、それは病人らしい行動だろうか?

病気のふりをしながら我慢するなんて、彼にはできなかった。

ドアを開けると、じっと自分を見つめる警備員たちの目に気づき、怒りが込み上げてきた。

上場企業の社長である光町一の富豪が、まるで囚人のように監視されているなんて、何という話だ?!

こんなに惨めな思いをしたことは今までなかった。

高橋進は怒りが増すばかりで、「バン」とドアを閉め、部屋に戻って親友に電話をかけた。

「進か、どうしたんだ?」

高橋進は深く息を吸って:「この病気はどうすれば治るんだ?」

吉田院長は彼の親友であり、同級生でもあった。今回の病気の演技が上手くいったのも、この友人の功績が大きかった。

「治す?前は一生治らなくても構わないと言っていたじゃないか?」高橋進の言葉を聞いて、吉田院長は困惑した。