第326章 「W」組織に興味ある?

「そうなんです」小林悦子は少し苦しそうな表情を浮かべた。「今、私の大学で研修を受けていて、先輩にあたるんです。彼女は、お兄さんに近づかないようにと言ってきました」

高橋姉帰はまだ諦めていないようだ。

池村琴子は心の中で冷笑い、小林悦子に笑顔で言った。「彼女の言うことなんて気にしなくていいわ。高橋家では今、高橋敬一以外誰も彼女を妹として認めていないから」

高橋姉帰がまだ東京にいて、しかもA大学で研修を受けているなんて。

これは罰というより、むしろ褒美じゃないか。

高橋姉帰がこんなにも図々しいのも無理はない。彼女がこんなにも利己的な性格になったのは、高橋敬一の責任が大きい。

「本当ですか?」小林悦子の目が輝いた。「それなら安心です。ありがとうございます、お姉さん。今すぐ高橋さんに服を返しに行きます」

彼女は池村琴子に手を振り、急いで外に走り出た。

池村琴子は小林悦子がピンク色の電動自転車に乗って、あっという間に遠ざかっていくのを見送った。

日が沈むころ、高木阿波子も時間通りに到着した。

「仙姉さん」高木阿波子は走ってきたようで、息を切らし、顔を赤らめていた。

「少し休んで」池村琴子は彼女に水を差し出し、隣のソファを指さした。

高木阿波子は一口水を飲み、高木財源の警告を思い出し、歯を食いしばって池村琴子に言った。「仙姉さん、高橋進は病気じゃありません」

池村琴子は少し驚いた様子を見せた。

「彼の痴呆症は演技なんです!」高木阿波子はもう一度説明した。

高木阿波子がこのニュースを伝えに来たとは思わなかった。

信じてもらえないかもしれないと思ったのか、高木阿波子は焦った様子で続けた。「竹内雅子が父に話したんです。その時私もいました。高橋進は全然病気じゃないって。結婚生活を取り戻すために、面子を保つために演技をしていただけで、実際には全然病気なんかじゃないって」

「この話は信じがたいかもしれませんが、私は嘘なんか言いません。翌日、竹内雅子は父と会った後でも、このことを確認していました」

言い切れなかった言葉もあった。例えば高木財源が帰ってきても真相を話さなかったこと、それは彼女が自分で推測したことだということ。

なぜなら高木財源には別の考えがあったから。