写真のことを止める間もなく、竹内雅子はもう送信してしまっていた。
後で羽に電話をかけて、自分が説明する必要があるかと尋ねたが、羽は必要ないと言った。いずれ離婚することになるし、これは単なるきっかけに過ぎないと。
羽が本当に自分の助けを必要としていないと分かり、彼はもうこの件に関与しなかった。
高橋進からの電話は、予想していたようで、予想外でもあった。
「お前が死ぬまでこの件について電話してこないと思っていた」長年の付き合いで、高橋進の性格をよく知っている。プライドが高く、自分から頭を下げて尋ねてくることなど決してない人だ。
「余計なことは言わなくていい。あの日、羽が紹介してくれただけで、お前たちの単独デートではなかったのかどうか、それだけ答えろ」
「そうだったらどうする?違ったらどうする?」山田義隆は嘲笑い、怠惰な口調で面白そうに言った。「たとえ俺と羽は潔白だと言っても、お前と竹内雅子はどうなんだ?お前たちは潔白か?」
「俺たちのことは関係ない。ただイエスかノーか答えろ」高橋進はいらだちを見せた。
「そうだ」山田義隆は誠実な声で言った。「羽は俺がずっと独身なので友達を紹介してくれただけだ。俺と彼女の関係はそれだけで、写真に写っているようなことも、お前の愛人が言うようなこともない」
「ゴロゴロ」という雷鳴が高橋進の耳元で轟いた。
やはり、羽を誤解していたのだ。
しかし、その後の山田義隆の言葉は彼をさらに崩壊させた。
「でも真実を知っても遅すぎた。前も言ったが、二人の間の信頼は一度壊れたら修復は難しい。お前と羽の間に、まだ信頼は残っているのか?」
信頼……
高橋進は体が凍りつき、何かを思い出して目を閉じた。
信頼は、かつてはあった……
彼が、一歩一歩自らの手で二人の間の信頼を破壊したのだ。
羽は彼を裏切るようなことは何一つしていなかったのに、彼は羽を裏切るようなことをしてしまった。
羽は彼を許してはくれないだろう。
「社長、社長……」高橋進が呆然としている様子を見て、竹内雅子の声は焦りを帯びていた。
高橋進は目を上げ、竹内雅子に視線を向けた。その表情は死人のように冷たかった。
「山田義隆の戯言を信じないでください。彼と……」
「黙れ!」高橋進は怒鳴り、手を上げかけたが、女性だと思い直して我慢した。「出て行け!」