木村爺さんは上機嫌で、当然、彼の言うことがすべてだった。
「そうだな。お前の弟が、お前が良くなったと知れば、戻ってくるかもしれないな」木村爺さんは山本正博がただ感情的になっているだけだと思い、誰かがこの孫を連れ戻すのを手伝ってくれれば良いと考えた。
年を取ると、自然と子孫繁栄を願うものだ。
木村誠治が全て準備を整えて出てきた時、木村家の警備員たちは驚愕した。
普段はほとんど外出せず日光に当たることもない彼は、肌が透き通るほど白く、女の子よりも美しい顔立ちで、門の外の警備員を呆然とさせた。
「誠治様...」
「吉田兄」木村誠治が先に挨拶した。
警備員は息を呑み、自分の耳を疑った。
そのとき、傍らの使用人が「お坊ちゃまが良くなられました」と一言。
その一言が波紋を呼び、別荘内の雰囲気は一気に明るくなった。