前回、高橋敬一は表向き高橋姉帰を実家に送り返すと言ったものの、高橋姉帰の手腕を考えると、また高橋敬一を説得して心を揺らしたに違いない。
高橋敬一のクレジットカードを止めたとしても、この何年もの間、三兄弟の名義で他の事業も手がけており、少なくとも高橋敬一の下にある二つの法律事務所の収入はかなりの額になる。
高橋敬一が高橋姉帰を助けたいのなら、見て見ぬふりもできるが、助け過ぎるのは家の財産を他人に与えるようなものだ。
「姉帰には少しの生活費と、実家に帰る航空券を渡しただけだ」高橋敬一は冷静な表情で言った。
池村琴子は軽く口角を上げた。高橋敬一の言葉は半分しか語っていない。
彼はまだ高橋姉帰に後ろ盾を残したがっているのだ。
残念ながら、生まれつき反論好きな自分に出会ってしまった。