第342章 高橋敬一の失望

前回、高橋敬一は表向き高橋姉帰を実家に送り返すと言ったものの、高橋姉帰の手腕を考えると、また高橋敬一を説得して心を揺らしたに違いない。

高橋敬一のクレジットカードを止めたとしても、この何年もの間、三兄弟の名義で他の事業も手がけており、少なくとも高橋敬一の下にある二つの法律事務所の収入はかなりの額になる。

高橋敬一が高橋姉帰を助けたいのなら、見て見ぬふりもできるが、助け過ぎるのは家の財産を他人に与えるようなものだ。

「姉帰には少しの生活費と、実家に帰る航空券を渡しただけだ」高橋敬一は冷静な表情で言った。

池村琴子は軽く口角を上げた。高橋敬一の言葉は半分しか語っていない。

彼はまだ高橋姉帰に後ろ盾を残したがっているのだ。

残念ながら、生まれつき反論好きな自分に出会ってしまった。

「少しの生活費ね...」池村琴子は落ち着いて聞き終わり、皮肉な笑みを浮かべて言った。「きっとかなりの額を渡したんでしょうね。東京大学に通えるくらいの」

東京大学...

全員が高橋敬一を見つめた。

東京大学は誰でも入れる大学ではない。天才か、お金持ちでなければならない。

高橋姉帰が東京大学に入学したなんて!

天才である可能性はない。高橋姉帰の現在の身体状態では、おそらく金で買い取ったのだろう。

「高橋敬一、四妹の言うことは本当なのか?」高橋謙一は眉を上げ、だらしない態度で優雅に言った。「彼女のために学校まで買ったのか?さすが日本一の良い二兄だな」

「敬一」鈴木羽は高橋敬一をじっと見つめた。「彼らの言うことは本当なの?本当に彼女を東京大学に入れたの?」

高橋敬一は目を伏せ、唇を固く結び、暗い眼差しを向けた。

彼のその様子を見て、鈴木羽は失望の表情を浮かべた。

自分の息子のことはよく分かっている。高橋敬一のこの態度は、言い当てられたということだろう。

「あの子があんな悪いことをしたのに、助けるくらいなら目をつぶることもできたけど、なぜ学費まで援助するの?」

鈴木羽は言い切れない言葉があった。

高橋姉帰はもう足を失っているのだから、たとえ進学しても様々な職業から締め出されることになる。今のやり方は単なる金の無駄遣いだ。