東京中央高級住宅街、南條家。
屋内の空気は重く沈んでいた。
前回の誕生日パーティー以来、南條家の使用人たちは戦々恐々と歩き回り、南條さんは外出を控え、家で花を育て、外からの誘いを一切断っていた。
セレブ夫人たちの間では、南條さんが面目を失い、外出できなくなったことは周知の事実だった。
そして南條夜は、仕事以外の時間のほとんどを自室に閉じこもって過ごしていた。
そんな時、一台の黒い高級車が南條家の邸宅の前に停まった。
山口念はサングラスをかけ、毛布のような大きなコートを纏って、足早に邸宅に入った。
南條夜は庭園で一人酒を飲んでおり、目の前には空き瓶が散乱していた。
黒いダウンジャケットを着ていた彼は、暑さを感じたのか首元を引っ張り、鎖骨と白い肌が大きく露わになった。