第349章 高橋家には私がいて彼女はいない

高橋敬一は黙ったまま、彼らの前まで歩いていった。

「姉帰はもう自分の過ちを理解しています」彼は一旦言葉を切り、「皆さんはどうすべきだと思いますか?学費も既に支払われていますし…」

「私たちにどうすべきかを聞くより、あなた自身がどうしたいのかを考えたらどうですか」池村琴子は優しさを失い、皮肉めいた口調で言った。「私たちが何をしても、あなたは姉帰をいじめていると思うでしょう。では、あなたの解決策を聞かせてください」

高橋敬一と高橋姉帰の物語を知って初めて、彼女は一部の事が自分の想像以上に厄介だと気付いた。

表面上は高橋姉帰が高橋敬一に依存しているように見えるが、実際は高橋敬一が高橋姉帰に依存しているのだ。

必要とすることも、必要とされることも、全て絆と依存なのだ。

高橋敬一は数秒黙り込み、姉帰にこの学期を終わらせようと言おうとしたが、言葉が喉まで出かかって、結局言えなかった。

彼は自分の欠点を知っており、姉帰がいくつかのことをやり過ぎたことも分かっていた。

「退学させましょう」高橋敬一はため息をついた。

どんなに心が痛んでも、決断しなければならない。

彼は二つの法律事務所を持っている。姉帰が仕事を見つけられないなら、一つを彼女に任せて管理させればいい。そうすれば生計は立てられる。餓死することはない。

「退学は当然のことです。あれだけのことをしておいて、さらに進学させようとするなんて、罰を褒美にしているようなものです。だから彼女があんなに傲慢になるんです。あなたという兄がバックについている限り、彼女は永遠に自立することを学べないでしょう」高橋謙一は一字一句はっきりと、氷のような刃物のように冷たく言い放った。その言葉の一つ一つが高橋敬一の心を刺した。

「分かりました。実家に送り返します」最後の譲歩だった。

彼は姉帰に2000万円は出せないが、会社一つを与えることはできる。

彼女が高橋の姓を名乗る限り、外では誰も露骨に彼女をいじめることはできないだろう。

しかし次の瞬間、池村琴子の言葉が彼の計画を粉々にした。

「明日、記者に発表させます。高橋姉帰は高橋家とは一切関係がないこと、これからは彼女の行動は全て高橋家とは無関係だということを」