高橋敬一は黙ったまま、彼らの前まで歩いていった。
「姉帰はもう自分の過ちを理解しています」彼は一旦言葉を切り、「皆さんはどうすべきだと思いますか?学費も既に支払われていますし…」
「私たちにどうすべきかを聞くより、あなた自身がどうしたいのかを考えたらどうですか」池村琴子は優しさを失い、皮肉めいた口調で言った。「私たちが何をしても、あなたは姉帰をいじめていると思うでしょう。では、あなたの解決策を聞かせてください」
高橋敬一と高橋姉帰の物語を知って初めて、彼女は一部の事が自分の想像以上に厄介だと気付いた。
表面上は高橋姉帰が高橋敬一に依存しているように見えるが、実際は高橋敬一が高橋姉帰に依存しているのだ。
必要とすることも、必要とされることも、全て絆と依存なのだ。
高橋敬一は数秒黙り込み、姉帰にこの学期を終わらせようと言おうとしたが、言葉が喉まで出かかって、結局言えなかった。