第359章 彼女がこの組織を引き継ぐまで

山本正博は携帯をいじりながら、松田柔子に軽い視線を向けた。

松田柔子は緊張のあまり、両手の置き場に困り、目線も定まらず、彼と目を合わせる勇気もなかった。

「俺の携帯に触ったな?」

山本正博の声は平坦に聞こえたが、耳に届くと冷たい寒気を感じさせ、陰険で冷酷だった。

松田柔子は思わず一歩後ずさり、目には慌てた色が浮かんでいた。

「いいえ、触っていません」

声には震えが混じっていた。

彼女には分からなかった。自分はうまく隠したつもりだったし、素早く行動したのに、どうして山本正博はこんなにも早く気付いたのか?

まさか透視能力でもあるのだろうか?

木村爺さんはその様子を見て、不満げに言った。「彼女はずっとここで誠治と話していたじゃないか。お前の携帯のパスワードも知らないのに、どうやって触れるんだ?正博、お前はシャワーで頭がおかしくなったんじゃないのか!」