第358章 本当に情に厚いね

「可乃子さんは本当に神通力がありますね」木村誠治は笑みを浮かべていたが、人を寒気させるような笑顔だった。

彼の声は中性的で、鋼のような強さの中に柔らかさを秘めていたが、人の心を震わせるものだった。

松田柔子は表情を変えなかったが、手のひらに汗が滲んでいた。

鈴木愛が彼を好きになれないのも無理はない。表面は美しいが実際は毒を持つ花のような男を、誰が好きになるだろうか。

「人は生きている限り、お互いの利益のために動くものです。あなたは木村勝一の兄ですから、これからは私の兄でもあります。鈴木愛は当然私の義姉になります。あなたが同意さえすれば、私には二人を結びつける方法がたくさんあります」

「可乃子さんの言う方法とは...薬を使うということですか?」木村誠治は彼女をじっと見つめた。

松田柔子は顔色を変えた。木村誠治は高木阿波子に対する策略を自分にも向けられたことを覚えていたのだ。

当時、彼女は木村誠治をただの馬鹿だと思っていた。どうせ自分には

責任が及ばないと考えていたが、まさか木村誠治が正気を取り戻していたとは。

やはり、木村誠治は前からずっと演技をしていたのだ。

彼は彼女の策略を知っていて、さらには一緒に演じていたのだ。

このような男は、頭から足先まで恐ろしさに満ちていた。

松田柔子は作り笑いを浮かべながら唇を歪めた。「薬を使うのは最も簡単ですが、最も下品な手段でもあります。長続きしません。鈴木愛の場合は、別の方法を使わなければなりません」

この言葉は木村誠治の興味を引いた。

彼は鈴木愛のことが好きだが、そんな下品な手段は使いたくなかった。

もし松田柔子がまた薬を使おうとするなら、彼は松田柔子に毎日薬を飲ませ、その苦しみを味わわせてやるつもりだった。

木村誠治の視線に出会い、松田柔子は思わず首を縮めた。

何か言おうとした時、山本正博が浴室から着替えを済ませて出てきた。

彼はテーブルの上の誕生日ケーキを一瞥し、唇の端に嘲笑的な弧を描いた。

木村爺さんが部屋から出てきて、ケーキを指さしながら言った。「これは私たちが特別に注文したものだ。お前の父親もこの店のケーキが好きだったんだ。これだけ年月が経って味が変わっていないかどうかわからないがね」

以前と比べて、木村爺さんはかなり痩せこけていた。