第364章 鈴木鈴の自信

「なんでもないわ」池村琴子は、結婚の真相を知られることを恐れ、思わず顔を背け、彼の鋭い視線を避けた。

山本正博は彼女をじっと見つめ、その眼差しは熱く、その意図を読み取ることは難しかった。

「君は南條夜に献血もできるし、近籐正明と何でもできる。なのに、僕とは一言も話したくないのか」山本正博は目を閉じ、長く息を吐いた。

彼の声は暗く低く、心臓は枷に縛られているかのように、少し呼吸をするだけでも痛みが走った。

かつて彼女を傷つけたことを知っている。彼女が自分に対して心の壁を作るのは当然だ。しかし、実際にこの状況に直面すると、全身が冷え切るような思いだった。

時として記憶力が良すぎることも苦痛だ。ビジネスの世界では威風堂々としているのに、好きな女性の前では、ただ卑屈に頭を下げることしかできない。