彼女が高橋仙の話を持ち出すと、横山紫の表情が明らかに強張った。
その人物は、彼女が触れたくない存在だった。
組織の人々は、その人物について組織内で情報が見つからないと伝えただけだったが、池村琴子がお金を使って組織内で地位を買ったという可能性は否定できなかった。
数億円を出せる人なら、組織内で偽の地位を買って装うことなど難しくはない。
後に池村琴子が動き、鈴木グループが南條家の圧力の中で危機を乗り越えた時、彼女は池村琴子の身分に疑いを抱くようになった。
これは金だけで可能なことなのか?
池村琴子はいったいどれだけの金を使えば一つの企業を救い、さらにあれほどの提携を結べるというのか?
ゴミを拾う老婆に育てられた女が、どこからそんな大金を手に入れたというのか?
横山紫には理解できなかった。
組織からブラックリストに載せられて以来、どこでも圧力をかけられ、「W」組織のような小規模な組織でさえ彼女を受け入れようとしなかった。
組織から追放された者は、組織どころか、企業や会社も雇おうとしない。結局のところ、誰が爆弾を抱え込みたいと思うだろうか?
今、松田柔子に問われ、横山紫は自分の顔が強く打たれたような感覚を覚えた。
「大丈夫ですよ、横山さん。率直におっしゃってください。私にお力添えできるかもしれません」
松田柔子の言葉が社交辞令だと分かっていても、横山紫は正直に話すことにした。
「戻りたいのですが、すでに追放されてしまいました。再び戻るのは極めて困難です」
組織のトップが親戚でもない限り、もう二度と戻ることはできないだろう。
そう考えると、横山紫はゆっくりと頭を垂れた。
本当に池村琴子が憎い。もし彼女が組織の人間だったならまだしも、金で自分を追い出したなんて、これは人生における最大の屈辱だった。
「私なら戻れるようにできます」松田柔子の声には隠しきれない自信と得意げな調子が混ざっていた。
横山紫は自分の耳を疑った。彼女は目を見開いて、松田柔子をじっと見つめた。「可乃子さん、今おっしゃったのは...組織に戻れるということですか?」
松田柔子が並の人物でないことは知っていたが、まさかこれほどの力を持っているとは思わなかった。組織に戻れるなんて。