第362話 今後私を引き立ててくださいね

池村琴子は笑いながら黙って、山本正博を一瞥した。彼は平然とした表情で、手を伸ばして彼女の手を握った。

池村琴子は昨日の電話のことを思い出し、思わず手を引っ込めた。

車の窓の外で、松田柔子は優しく微笑んで、彼女の答えを待っているようだった。

「高橋さん、今日あなたの上司が来るんですよね?」

また追及してきた。目的を達成するまで諦めないような様子だった。

池村琴子は彼女を軽く見やり、冷淡な口調で言った。「あなたに関係ありますか?」

松田柔子の呼吸が一瞬止まった。

「W」組織のことは今のところ彼女には関係ないが、これからは密接に関わってくるはずだった。

この高橋仙のことは、組織を引き継いだら真っ先に始末してやる。

自分の前で威張らせておいて、いずれ代償を払わせてやる。

松田柔子は深く息を吸い、胸に手を当て、意味深な笑みを浮かべた。「そうですね。あなたは『W』組織の上司の側近でもないし、来るかどうかなんて知るはずもない。私が考えすぎでした。」