第375章 後手

コンテストには裏があることもありますが、こんなにあからさまな不正は、本当に見苦しいものでした。

上田従雲は数珠を弄る手を止め、軽く頷きました。「日本の代表選手は、こんな無名の人物であってはいけない。彼女のデザイン力は悪くないが、他国との対戦では、まだその実力はない。」

この言葉に、主催者たちは皆沈黙しました。

彼らも分かっていました。日本の代表として出場できる者は、まず安定性があり、そして勝利を求められるということを。

この件は一見審査員たちで決められるように見えますが、実際にはすべての総合的な能力を見なければなりません。

突然どこからともなく現れた人物に「W」組織を、日本を代表させるなんて、彼らだけでなく、この件を知る者は誰もが心配するでしょう。

これは国際大会なのです。勝利も大切ですが、より重要なのは恥をかかないことです。

そして、この池村琴子は、本当にこの重責を担えるのでしょうか?

誰も答えることができませんでした。

この突然現れた池村琴子が以前何をしていたのか誰も知らない、もし何か黒い噂が出てきたら、日本全体の名誉を汚すことになります。

そう考えると、主催者たちは皆残念そうにため息をつきました。

国の名誉に関わることなので、池村琴子のような突然現れた人物には、確かにこの重責は任せられません。

上田従雲は他の主催者たちに異議がないのを見て、手を振って解散を告げました。

人々が去った後、短髪のボディーガードが近づいて尋ねました。「上田先生、木村さんからメッセージが来ています。お礼を言いたいとのことで、お食事にお誘いしたいそうです。」

上田従雲は手の数珠を弄びながら、軽く首を振りました。「食事は結構だ。彼が私に頼んだことは正々堂々としたものではない。この件は助けたことで終わりにしよう。」

木村爺さんは昔から彼と親しく、彼が主催者だと知ってからこの無理な要求をしてきたのです。

もう棺桶に片足を突っ込んでいる人間が、若い女性に意地悪をするなんて、彼はそんなやり方を軽蔑していました。

しかし軽蔑はしつつも、結局は彼の頼みを聞いて、池村琴子を決勝から外したのです。

池村という姓を思い出し、上田従雲の目が遠くを見つめました。

「数日後には光町で茜に会えるんだ。」