第390章 絆が消えた

「命に別状はありません」

簡単な言葉で、高橋謙一に告げた。

南條夜は最初、子供のことで山本正博を刺激しようと思ったが、大勢の人がいる場所で記者がいるかもしれないと考え、すぐに口を閉ざした。

今、子供のことを話せば、山本正博は必ず病室に突っ込んでいくだろう。

池村琴子が今一番必要としているのは休息であり、山本正博が来ることで受ける二重の衝撃ではない。

「大丈夫なら良かった」高橋謙一はほっと息をつき、山本正博に視線を向けた。「妹は大丈夫だから、早く帰れよ。殴られたくなければな」

以前なら直接山本正博に拳を振り上げていただろうが、彼は鈴木正男と仙の命の恩人だし、自分も彼の車を借りているから、恩を受けた手前、とりあえず山本正博を追い払うしかなかった。

山本正博が動かないのを見て、高橋謙一は南條夜の肩を叩き、階段を上がっていった。