第401章 何しに来たの

この子を失って、彼は彼女にとって簡単に捨てられる存在となった。

子供という絆がなくなった今、彼は何なのか?

彼女は「W」組織に守られ、高橋家の愛娘で、兄に可愛がられ、母に甘やかされ、さらに東京で名高い南條夜が必死に求愛している人物だ。

そんな中、山本正博である彼は、一体何なのか?

以前は子供の父親という立場で彼女を気遣い、道を開くことができた。

でも今は、何もかもなくなってしまった。

そう悟った瞬間、山本正博の心臓が鋭く痛んだ。熱い鋼球が心臓に散りばめられたかのように、冷たく硬く、心の先を転がっていく。

彼は胸に手を当て、まぶたを伏せ、薄い唇が淡い笑みを浮かべた。

山本正博の体の両側に垂れた、関節が白くなった手を見て、松田柔子は声を詰まらせた。「誠治さん、私は…」