第402章 火の穴

彼は入るのが恥ずかしかったが、南條夜なら大丈夫だ!

「南條さん……」高橋謙一は熱心に彼を脇に引っ張り、隣の病室を指差した。「山本正博のやつが中にいるんだ」

南條夜の表情が一瞬固まった。

山本正博?

なぜ彼が来たのか?

高橋謙一は彼に近づき、意地悪そうに笑った。「お前が妹のことを好きなら、妹を地獄に落とすのを見過ごせないだろう?」

彼から見れば、今の山本正博は地獄そのものだった。

妹は誰とでも付き合えるが、この厄病神だけは駄目だ。

山本正博と付き合ってから、妹の運気は悪くなる一方だった。

今や子供まで失って、もう互いに借りもないのに、このクズ男がまた仲直りしに来るつもり?

絶対に許さない!

「地獄?」南條夜は穏やかな表情で言った。「山本正博は……そこまでひどくないでしょう?」

「様々な女と関係を持ち、自分の子供を失わせた。これが地獄じゃないなら何なんだ?」高橋謙一は唇を歪め、冷たい目つきで言った。「今は彼女が一番脆弱な時期だ。お前にとっては絶好のチャンスだぞ」

「今すぐ入って、深い話をさせるな。男の口は嘘つきだ。山本正博に二度と妹を騙させはしない」高橋謙一は歯ぎしりした。

南條夜はすぐに理解した。高橋謙一は彼に二人の邪魔をしてほしいのだ。

南條夜の目が深く沈んだ。

山本正博がこんなに早く来るとは思わなかった。どうやら彼は本当に琴子が堕胎したことを知らなかったようだ。

山本正博が池村琴子に与えた傷を思うと、南條夜の心配する気持ちが抑えきれなくなった。

高橋謙一が山本正博と池村琴子の関係を望まないように、彼も望んでいなかった。

「南條、今は君だけが妹を助けられる。頑張ってくれ!」

高橋謙一は切実で重々しく言った。

……

部屋の中は暖房が程よく効いていたが、ベッドに座っている池村琴子はまだ寒さを感じ、無意識に布団を上に引き上げた。

山本正博は彼女のお腹を見つめ、目を赤くして言った。「赤ちゃんは……」

池村琴子の心が震え、顎を引き締め、唇が白くなった。「もういないわ」

その言葉を口にした時、声が震え、一瞬にして大きな悲しみが込み上げてきた。

最悪の結果を受け入れようと必死に自分を説得してきたが、実際にこの事実に向き合うと、やはり耐えきれなかった。