木村爺さんは笑った。
数十歳どころか、十歳若くても、この組織を引き継ぐつもりだった。
古来より、権力と金に興味を持たない男などいない。
残念ながら、彼は年を取り、長くは生きられない。この組織を手に入れても無駄になるだけだ。早めに後継者を見つけた方が、子孫のためにもなる。
「爺さんを騙すつもりはありません。私はこの組織に興味があり、爺さんに任せてほしいのです。」
その言葉を聞いて、木村爺さんは無言で笑った。
この孫の度胸が気に入った。以前の抜けた様子とは別人のようだった。
「私も君に任せたいが、これは君の父が決めたことだからな...」木村爺さんは躊躇いを見せた。
その組織が一体どうなっているのか、今でもよく分からない。正博に任せると言っても、正博が上手く引き継げるかどうか、疑問に思っていた。
「爺さんが難しい立場にいるのは分かります。爺さんはこの組織のトップではありませんから。ただ、私は木村の姓を持つ者として、もしこの組織を引き継げば、組織も木村の名を冠することになります。」
木村誠治は笑みを浮かべ、爺さんの表情が和らぐのを見届けた。
彼は爺さんの弱みも、弟の弱みも知っていた。
「W」組織を木村勝一に任せれば、最後には鈴木の姓を名乗ることになるかもしれない。しかし、自分なら決して外に流すことはない。
木村爺さんも明らかにそのことを考えていた。木村誠治を深く見つめ、笑いながら言った。「誠治は昔とは違うな。」
愚かな孫より野心のある孫の方がいい。
木村誠治との面会を終えた木村爺さんは、携帯の着信を確認した。正博に早く池村琴子と再婚するよう送ったメッセージには返信がなかった。
正博は相変わらず自分を爺さんとして認めていない。
おそらく、木村家の将来について真剣に考える時が来たのだろう。
...
鈴木邸で、池村琴子は丁度四郎からのメッセージを受け取った。
木村爺さんは予想通り動き出した。
今回は、直接学長に圧力をかけた。
学長は頑固な性格だったが、小林悦子の証言を止めることはできず、ただもう一人の学生を心配して、はっきりと話をした。
吉田艾子という学生は案の定、尻込みした。
「彼女を困らせないで。大学四年間の学費を出してあげましょう。私たちの支援として。」