第424話 彼はそんなに大切なの?

彼女は山本正博がこの提案を拒否することは受け入れられるが、池村琴子の意見を求めることは受け入れられなかった。

将来を恋敵に委ねることは、彼女への明らかな侮辱だった。

池村琴子の眼差しは純粋で透き通っていた。彼女は横山紫を一瞥し、山本正博に微笑んで言った。「彼女の言う通りよ。近籐正明は私の友達だから、もちろん友達を選ぶわ」

言い終わると、彼女は冷ややかな目で山崎三郎を見つめ、唇の端をかすかに上げ、瞳の奥に冷たさを宿した。

彼女は山崎三郎が上位の地位を要求すると思っていたが、まさか異分子を排除したいだけだとは。

なるほど、組織が横山紫のような人物を採用した理由が分かった。山崎三郎が内通者だったのだ。

彼女が近籐正明を友人だと言うのを聞いて、山崎三郎は彼女を何度も見つめた。

近籐正明という人物は変わった性格で、友人は少なかった。彼と友達になれる人物は、並の人間ではないはずだ。

「なるほど、近籐正明の実績がこんなに良いわけだ。お前がスポンサーだったとはな」山崎三郎の言葉には含みがあった。

山本正博は眉をひそめた。スポンサーという言葉は耳障りすぎた。

彼は以前、池村琴子と近籐正明の仲が良い理由が分からなかったが、これらの事をスポンサーと結びつければ、すべてが納得できた。

「誠治さん、私の要求はこの二つだけです。もしあなたが同意できないなら、それは私たちの理念が合わないということです」山崎三郎の声には深い遺憾の意が込められていた。「この二つの要求は誠治さんにとって大したことではないと思っていましたが、こんなにも難しく考えるなら、私たちは合意に達することはできません。ただし...一つ助言させていただくと、'W'組織を引き継ぎたいなら、必ず人員の入れ替えが必要で、多くの人を敵に回すことになります。近籐正明は現在の指導部に忠実すぎる。たとえ残しても、あなたのために働く気にはならないでしょう」

「誠治さん、両立を望むのは贅沢すぎますよ」

そう言って、山崎三郎は池村琴子を見つめ、意味深な笑みを浮かべた。

池村琴子は冷静に聞き終え、冷たく笑った。

山崎三郎は人の弱点を突くのが上手い。

先ほどの数言で、さりげなく彼女と山本正博の関係を引き裂こうとした。