喫茶店の個室で、心地よい音楽が空間に流れ、せせらぎのように耳を洗い流していた。
「まだ来ないのか?」山崎三郎は待ちくたびれていた。
数日前から、松田柔子は彼と木村勝一との面会を手配していた。国内から海外へ、そしてまた国内へと、毎回の面会で何かしら不測の事態が起きていた。
山崎三郎は疑わしげに松田柔子を見た。一度や二度ならまだしも、何度も何かが起きるのは、少し出来すぎではないか。
この松田柔子は、自分を弄んでいるのではないか?
山崎三郎がますます苛立つのを見て、松田柔子は緊張と悔しさを感じていた。
毎回の面会で不測の事態が起きるのは、彼女にはどうすることもできないことだったのに……
「山崎さん、誠治様は来ると言ったからきっと来られます。おそらく、道中で何か手間取っているのでしょう。」