木村邸では、庭師が外で木の枝を剪定し、警備員が門に立って、鋭い目つきで出入りする人々を見つめていた。
警察が木村家を訪れて以来、木村家のセキュリティは強化されていた。
木村家の豪華な大広間で、木村爺さんが中央に座り、怒りで顔色が青ざめていた。
彼の前に座っている山本正博は、深い眼差しで、爺さんの怒りを見て見ぬふりをしているようだった。
「正博、お前と池村琴子は...一体どうするつもりなんだ?」木村爺さんは警察の言葉を思い出し、体を震わせた。
今日、警察が来て池村琴子が通報したと言い、あの連中を全員逮捕した。首謀者に何を言ったのか分からないが、すぐに自分のことを白状したという。
彼の年齢と名声を考慮して、警察は非公式に訪れ、被害者と示談するのが最善だと言った。そうしなければ、この件は刑事事件になるという。
示談だと?人を雇って誘拐や脅迫をしておいて、本当に示談で済むなら、池村琴子は警察を呼びはしなかっただろう。
彼女は明らかに最後まで争うつもりだった。
これら全てが池村琴子の仕業だと思うと、木村爺さんは怒りを感じながらも、何とか怒りを抑えて山本正博を呼び出した。
「特に何も考えていない」山本正博は木村爺さんの怒った様子を見て、目を細めた。「前回、私と琴子のことを早めに進めろと言ったのは、どういう意味だったんですか?」
この祖父は筋の通らない人間ではない。突然考えを変えたのには、必ず理由があるはずだ。
木村爺さんも隠すつもりはなく、意味深げに尋ねた。「彼女から聞いていないのか?」
山本正博は目を上げ、星のような眉目で、深い瞳を向けた。
「上田従雲が彼女を財産相続人に指名したんだ」これを言うと、木村爺さんの心臓が激しく鼓動した。
上田従雲のあの老人の財産は、羨ましくもあり妬ましくもあるほど膨大なものだった。
もし自分なら、どうしても実子を何人か作って相続させただろう。一生の財産を数回しか会ったことのない若者に与えるなんて、頭がおかしくならない限りそんなことはしない。
しかし上田従雲はそれをやってのけた。
上田従雲の財産を狙う者がどれほどいるかは言うまでもない。上田従雲の相続人という身分だけでも、大きな餌食だった。