池村琴子の苦悩を見て、南條夜の感情が波打った。
彼はこの組織の内部事情を知らないが、山本正博のやったことは、きっと彼女を困らせたに違いない。
山本正博のことを考えると、南條夜は怒りが込み上げ、どうしても抑えられなかった。
「あなたの赤ちゃんを失わせたのは彼なのに、今度はあなたを困らせることをしている。琴子、こんな男を、まだ許すつもりなの?」
彼は彼女を見つめ、清らかな声で、優しい眼差しに波紋を立てた。
池村琴子は唇を噛み、顔色が少し青ざめた。
南條夜は続けた。「琴子、私の気持ちは分かっているでしょう。でも、私はあなたと一緒になることを強制しない。山本正博とあなたの幸せを祝福しろと言われても、それはできない。彼はあなたをこんなにも傷つけてきた。私には彼にあなたを任せる気になれない……」