第419章 彼の企み

池村琴子の苦悩を見て、南條夜の感情が波打った。

彼はこの組織の内部事情を知らないが、山本正博のやったことは、きっと彼女を困らせたに違いない。

山本正博のことを考えると、南條夜は怒りが込み上げ、どうしても抑えられなかった。

「あなたの赤ちゃんを失わせたのは彼なのに、今度はあなたを困らせることをしている。琴子、こんな男を、まだ許すつもりなの?」

彼は彼女を見つめ、清らかな声で、優しい眼差しに波紋を立てた。

池村琴子は唇を噛み、顔色が少し青ざめた。

南條夜は続けた。「琴子、私の気持ちは分かっているでしょう。でも、私はあなたと一緒になることを強制しない。山本正博とあなたの幸せを祝福しろと言われても、それはできない。彼はあなたをこんなにも傷つけてきた。私には彼にあなたを任せる気になれない……」

南條夜の心配そうな表情が顔全体に広がり、端正で温和な顔立ちに冷たい色が浮かんだ。

彼は感情面で執着的な人間だった。

しかし、恋愛において、双方向の思いがなければ、手放すべきだということも分かっていた。

彼は一度手放した。でも山本正博は何をした?

何もせず、自分の子供まで失わせた。

「あなたと山本正博の間に何があったのか知らないが、彼のやったことだけでも、私が何度も殴りたくなるほどだ。琴子……」彼は思わず彼女の肩に手を置いた。「私があなたと一緒になりたいというだけじゃない。彼にまた傷つけられるのを見過ごせないんだ。」

池村琴子は優しく微笑み、そっと後ろに下がって、彼の手から逃れた。

「子供のことは、彼だけを責められない。」池村琴子は落ち着いたふりをして微笑んだ。その姿は煙のように儚く、この世のものとは思えないほど美しかった。

南條夜の手は宙に浮いたまま、顔に衝撃と悲痛の色が浮かんだ。

「今は皆さんが彼を誤解していると思うけど、私と彼の間のことは、簡単には説明できないの。」

彼女が最初に嘘をついたのだ。子供は胎内で不安定だった。あの日のことで、最も責任があるのは彼女自身のはずだ。

自分の体を顧みず無謀に追いかけたことが、流産の原因だった。

山本正博が彼女の嘘を知って怒るのは当然だった。おかしいのは彼女の感情だった。

彼の考えを気にしすぎて、お腹の子供さえも守れなかった。

南條夜の表情が凍りつき、彼女を見る目が複雑になった。