池村琴子の心臓は一瞬止まったかのように感じ、その後太鼓のように激しく鼓動し始めた。
彼女は若い女の子ではないが、このような温かい変化に直面すると、まるで少しの不注意で制御を失いそうになるほど抑えきれなかった。
松田柔子のことを思うと、池村琴子の高鳴る心は次第に落ち着いていった。
前回、師匠の遺言がすべて松田柔子の手中にあることを知り、柔子の関心も「W」組織にあることがわかった。
山本正博が組織に興味を持っているなら、松田柔子と協力して事を進めなければならない。
南條夜の言葉を思い出すと、池村琴子の目が少し潤んだ。
「山本さん……あなたは『W』組織に興味があるの?」
彼女は遺言のことには直接触れなかった。
しかし山本正博はその言葉を聞いただけで理解した。
「南條夜が話したのか?」山本正博は唇を歪め、冷たく笑った。