第420章 山崎三郎との対面

池村琴子の心臓は一瞬止まったかのように感じ、その後太鼓のように激しく鼓動し始めた。

彼女は若い女の子ではないが、このような温かい変化に直面すると、まるで少しの不注意で制御を失いそうになるほど抑えきれなかった。

松田柔子のことを思うと、池村琴子の高鳴る心は次第に落ち着いていった。

前回、師匠の遺言がすべて松田柔子の手中にあることを知り、柔子の関心も「W」組織にあることがわかった。

山本正博が組織に興味を持っているなら、松田柔子と協力して事を進めなければならない。

南條夜の言葉を思い出すと、池村琴子の目が少し潤んだ。

「山本さん……あなたは『W』組織に興味があるの?」

彼女は遺言のことには直接触れなかった。

しかし山本正博はその言葉を聞いただけで理解した。

「南條夜が話したのか?」山本正博は唇を歪め、冷たく笑った。

池村琴子は目を伏せ、黙ったままだった。

山本正博は優しい眼差しを彼女に向け、静かに言った。「これは父の遺言だ。」

「この組織のリーダーは、あなたの友達なの?」

実は彼の心の中には既に答えがあったが、彼女に直接聞くことはしなかった。

もし彼の推測が正しければ、池村琴子は必ずジレンマの渦に巻き込まれることになる。

彼は彼女を困らせたくなかった。

池村琴子は彼を一瞥し、組織は自分のものだと言おうとしたが、口に出す勇気がなかった。

彼女は怖かった。彼に自分の心の中の利己心を見透かされることが怖かった。

師匠は亡くなる前、密かに彼女に後継者の面倒を見るように言ったが、組織を後継者に譲るとは言っていなかった。

しかし、師匠がその後考えを変えたかどうかは、彼女にもわからなかった。

もし師匠の後継者がこの組織を望むなら、彼女には師匠の後継者と完全に決裂するほどの冷酷さはなかった。

しかし、組織を完全に手放すことも彼女にはできなかった。

彼女は山本正博に自分が組織のリーダーであることを知られるのが怖かった。さらに、二人が敵同士になることも怖かった。

人の本性は捉えがたく、彼女はそれで人性を試したくなかった。

「組織のリーダーは、確かに私の友達です。」彼女は彼の言葉に沿って答えた。

「その友達はお前にどう接している?」

池村琴子は少し戸惑った。「まあまあです。」