第440章 手配

「『W』は金で動くけど、『W』はお金に困ってないってことも忘れないでね」池村琴子は椅子の肘掛けに寄りかかり、その艶やかな唇と比類なき美しさを見せていた。

その嘲笑的な表情が、入社は無理だと明確に告げていた。

彼女が断るだろうと予想していた高橋敬一は怒りもしなかった。

もし自分の立場だったとしても、おそらく承諾しなかっただろう。

「君が彼女を嫌っているのは分かる。でも今、彼女は精神的に不安定だ。仕事を見つけてやらないで、このまま放浪させておけば、高橋家の面目も潰れる」と言って、高橋敬一は真剣な表情を浮かべた。「兄さんが会社を引き継いで整理している間に、何か問題が起きるのは望まないだろう?」

高橋家の評判は株価に影響を与え、市場の変動も大きい。高橋忠一が会社を引き継いでいるこの期間に何か問題が起これば、確かに彼にとって不利になる。

高橋敬一のこの言葉は、高橋姉帰のためだけでなく、本当に高橋忠一のことを考えてのことでもあった。

池村琴子は指で机を軽く叩きながら、意味深な笑みを浮かべた。「ここまで言うなら、彼女に仕事を用意してあげましょう」

高橋敬一は喜んだが、すぐに心に苦さが広がった。

彼女がついに承諾したのは、高橋忠一の面子を立てたからに過ぎない。

彼は分かっていた。池村琴子が今回折れたのは、高橋姉帰が高橋家の足を引っ張ることを恐れてのことだ。

しかし結果としては良かった。

彼がほっと息をついた時、池村琴子の柔らかな声に無関心さが混じっていた。

「組織で今空いているポストは清掃員だけよ。『W』の本社は東京にあって、高橋姉帰は入社後、全作業エリアの衛生管理を担当することになる」ここまで言って、彼女は明らかに高橋敬一の表情が凍りつくのを見て、唇の端を上げながら続けた。「あなたが彼女は目覚めて真面目に仕事を探すつもりだと言ったでしょう?ちょうどこの仕事であなたの言葉が本当かどうか確かめられるわ」

「もし彼女が本当にまともな仕事を探したいのなら、この仕事を嫌がることはないはず」

高橋敬一は眉をひそめた。

彼女の言い分は理にかなっているが、清掃員という仕事は、どう考えても姉帰が望んでいた仕事ではなく、恥ずかしさのあまり怒り出すかもしれない。

「高木阿波子にはどんな仕事を用意したんだ?」