第441章 職業に貴賤なし

「職業に貴賤はありません。兄さん、私のことを支持してくれますよね？」高橋姉帰は切実な眼差しで彼を見つめた。まるでそこは過酷な場所ではなく、彼女の夢のような場所であるかのように。

高橋敬一は唇を引き締め、黙って拳を握りしめた。

失望しているのか？

確かに失望しているはずだ。

彼が設立した会社が池村株式会社の清掃員よりも魅力的でないとは。

「本当にただの仕事だけを望んでいるのか？」高橋敬一はこの結果を受け入れがたく、じっと彼女を見つめた。

彼は承諾できなかった。高橋姉帰が後悔するのが怖かったからだ。

清掃員を差別しているわけではない。ただ、彼女にはその仕事が合わないと思っただけだ。

彼女は幼い頃から苦労を知らない。別の会社に行けば苦労できるというのか？自分の目の届くところにいれば助けることもできるが、視界から離れてしまえば、彼女が虐められても手出しができない。

高橋姉帰は必ず自分の会社を選ぶと思っていたのに、まさか池村琴子の会社を選ぶとは。

「はい、兄さん。私はただの仕事、私を平等に扱ってくれる仕事を望んでいるだけです。その仕事が何であれ、気にしません」

高橋姉帰は心にもない言葉を口にしながら、心の中では計算高く考えていた。

池村琴子は断るだろうと思っていたのに、まさか仕事を用意してくれるとは。

清掃員であっても、受け入れるしかない。

あの「W」組織なのだ。入社できれば、少なくとも友人や同級生の前で面子は保てる。

自分は「W」の一員だと対外的に言えば、中で何をしているかは自分の言い分次第だ。

そう考えると、むしろこの仕事に期待を抱き始めた。

高橋敬一は彼女が本当に清掃員になることを気にしていないのを見て、もう説得するのを諦め、池村琴子に入社日時を伝えて落胆しながら帰っていった。

高橋敬一から高橋姉帰が同意したという連絡を受けた池村琴子は、少し意外に思った。

清掃員は適当に言っただけで、本来なら高橋姉帰は同意しないと思っていた。どうやら彼女を見くびっていたようだ。

「妹、本当にあの女を会社に入れるつもりか？」高橋謙一がこの件を知ると、目を白黒させた。

なるほど、高橋敬一が彼らを避けていたのは、高橋姉帰のために仕事を頼むためだったのか。

この高橋敬一は、いったい何の惚れ薬を飲まされたのか、随分と態度が大きくなったものだ。